尻労郵便局の風景印(青森県下北郡東通村)
- 使用期間
- 平成11(1999)年3月10日~
- 図案説明
- アワビを外枠とし、能舞を描く
青森県下北郡東通村・尻労(しつかり)郵便局の風景印です。
下北半島を「まさかり」に見立てたとき、その柄の先端近くにあたるのが尻労です。
かなりの難読局名です。知らなければまず読めませんね。Google日本語入力では、「しっかり」と促音で入力しないと変換できませんが、実際に郵便局で伺うと、「しつかり」とのことでした。
この地名は、アイヌ語に由来するものです。アイヌ語研究の第一人者として知られる山田秀三氏は、尻労について次のように書いています。
下北半島は尻屋崎の突角から、太平洋岸を少し南に下った所に「尻労」という土地がある。なんとも妙な字で、又変な読方である。東北興業で炭礦をやっているので、聞いてみたが矢張り Shitsukari と発音するそうだ。青森の街で聞いたが、これもシツカリ又はシズカリであった。紀行文など注意して見ると、菅江真澄の「しつけり」、松浦武四郎の「静刈」がこの尻労のことらしい。
シリ(sir「地面、土地、山」)・ト゜カリ(tukari「……の手前」)すなわち「山の手前」の意味で、発音上は前語の語尾のrが、後のtに引きつけられてtに転訛するのが、アイヌ語の常則だそうである。
山田秀三『アイヌ語地名の研究・第3巻』
1983年、草風館
つまり「しつかり」は、アイヌ語の「シリ・トゥカリ」に漢字を当てたもの。北海道に静狩(しずかり)というところがあるのですが、この語源も同じだと考えられ、実際に風景も似通っているといいます。
それにしても、「労」という漢字に「かり」という読みはありません。ただ、「つか(れる)」という訓があるので、「しり・つかれ」が「しつかり」に転訛したのかもしれない、などと想像したのですが、どうでしょうか。
「山の手前」という語源のとおり、尻労漁港を中心とした尻労の集落は、陸地のどん詰まりにあります。ここから北へ6キロほどのところが尻屋崎なのですが、陸路はありません。尻労局は、それより少し手前の、漁港を見下ろす崖上の住宅地内にあります。道幅は車一台が通れるほどしかありません。3.11の震災時、尻労にも津波は押し寄せ、港に停めてあった自動車が海中へ引き込まれる等の被害があったそうです。
「正保国絵図」正保4年(1647)に記載されたことが最も古く、もともとは猿ヶ森寄りの低地に集落がありましたが、二百数十年前の津波に襲われたことにより現在の大岩付近に集落を移転したと伝えられています。
押印を済ませて外で局舎の写真を撮っていると、局長さん(たぶん)が出てきて、「この道を行くと海岸に出ます。そこからの眺めがすごいですから、ぜひ見ていってください。私も先日知ったのですが、日本一の砂丘だそうですよ」と教えてくださいました。
言われたとおり車を1~2分走らせると、にわかに視界が開け、眼下に砂浜が広がりました。これが全長約15kmにわたって続く「猿ヶ森砂丘」の北端部分です。鳥取砂丘に比べて3倍の面積だと言われ、間違いなく日本一の砂丘といえます。しかしその全域が、防衛省技術研究本部が射撃試験などを行う「下北試験場」として管理されているため、一般人は立ち入ることができません。
下北試験場は、火器及び弾火薬類の弾道性能試験やその性能を実射撃により検証できる唯一の施設として、年間200日を越える射撃試験などを実施しています。
防衛省東北防衛局広報編集委員会『かなめ』
2010年4月30日号
こんな人里離れた場所で、一年の半分以上の期間、軍事兵器の実験が行われているとは驚きです。いや、こんな場所だからこそなのでしょうけれども。
このことは青森県民でも知らない方がいるのだそうで、もちろん私も知りませんでした。もしそうした特殊な場所でなかったら、一大観光地になっていたのかもしれませんね。
尻労郵便局の地図
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